脇役だって、恋すれば

「香瑚ちゃん、今日はまた一段と可愛いな」 「あ、えっと……ありがとうございます」
「お礼を言うのはこっち。僕とのデートのために、おしゃれしてきてくれてありがとう」

 ふわりと微笑みを向けられ、さすがに照れずにはいられなかった。

 え〜なにこれ〜甘すぎて胸焼けしそうなんですが……!

 疑似デートの威力を舐めていたわ。というか、慶吾さんの王子様対応が素晴らしくて、本当に恋人になったみたいな気分。

 赤くなっているだろう顔を俯かせるも、私も返さなければと口を開く。

「慶吾さんは、いつも素敵です」
「はは、褒め上手だな。でも、君にそう言ってもらえるのはなにより嬉しいよ」

 謙遜もまったく嫌みな感じではなくて、完璧な返しだなーと唸ってしまう。こういうセリフも覚えておけば、新涼くんの参考になるだろうか。

 村娘だったら、私とは比にならないほど緊張も恐縮もするだろうなと思いながら、スマートな運転に身を任せた。

 メッセージのやり取りで今日の予定を立てている時、行きたい場所ややりたいことを聞かれたものの、私はおまかせでとお願いしておいた。

 慶吾さんがまず向かったのは自由が丘。セレクトショップやカフェが立ち並ぶ、パリのようなおしゃれな通りが乙女心をくすぐり、場所のチョイスも女子のツボを押さえている。