脇役だって、恋すれば

　予想外の指定に、思わず声を出してしまった。やばっと周りを見回すと、斜め後ろの席にいるめぐちゃんがこちらを振り返り、なにか察したように意味ありげな視線を送っていた。

　なんでもないよ、というように首を横に振ってデスクに向き直り、文字を早打ちする。

【当日でいいの？】
【俺は大丈夫。芦ヶ谷は次の日仕事？】

　仕事じゃないんだよな……会えるなぁ。もしかしたら、少しでも早く私の意見を聞いて参考にしたいのかも。

　彼が望んでいるならいいかと、【ううん、私も大丈夫。終わったら連絡するね】と返信した。

　社長とデートしたその足で新涼くんと会うなんて、まったく心臓が休まらない休日になりそう。

　ここ数週間で怒涛の展開になっていて、干からびていた私の心はなんとかついていくので精一杯だ。


　あっという間にやってきた土曜日。

　予定が決まった時から悩みまくった末、きれいめなカットソーにクロシェ編みのタイトスカートを合わせた大人っぽいコーデにした。メイクも艶感のあるヌードカラーのリップをつけて上品に、髪はアイロンで緩く巻いてある。

　こんなおしゃれは結婚式以外で初めてしたかもしれない。社長に失礼のないように着飾ったつもりだけれど、多少はあか抜けただろうか。

　朝から緊張であまりご飯も喉を通らないのだが、これは仕事なのだと自分に言い聞かせる。