脇役だって、恋すれば

 グランウィッシュは小さな自社ビルを持っている。企画部のオフィスは三階にあり、ふたりでそこに出社してからは気持ちを切り替えて仕事に勤しむ。

 ライトフルの他にもいくつか案件をかけ持ちしているので、頭をフル回転させなければいけない。

 自分のデスクに座って、とある有名企業の展示会についての企画書をまとめているとスマホが振動した。ディスプレイに須栗社長のアイコンが表示されて目を開く。

【今週の土曜日、さっそく出かけないか?】

 疑似デートのお誘いに、急に緊張が走る。社長を疑っていたわけではないけれど、やっぱり本気なのよね……と再確認した感じだ。

 この土日はたまたま私も仕事が入らず空いているので、断る理由もない。少しだけためらったものの、【承知しました】とビジネスメールのごとく堅苦しい返事を送信した。

 社長と疑似デートをするということは、その後に新涼くんにも会って報告をしなければいけないだろう。一応彼らにとっては仕事の一環なのだし。

 私からメッセージを送るのは再会してから初めて。そわそわしつつ【土曜日に社長と会うことになりました】となぜか敬語で送ると、五分も経たないうちに返事が返ってきた。

【じゃあその日、社長と別れたら会おう。遅くなってもいいから】
「えっ、当日!?」