脇役だって、恋すれば

 たしなめる新涼くんの声を遮って、私の無愛想な声が響いた。困惑して黙る彼からは目を逸らし、スプーンを持って溶けたバニラアイスをすくう。

「別に新涼くんのためだけじゃないから。私がそうしたいって思ってるの。ライトフルの新しいゲーム、早くやれないと困るもの」

 棘のある口調で言い、ひんやりと甘いそれを口に含んだ。

 私、いつからツンデレキャラになった?と思うような意地の張り方をしてしまったけれど、ここで引く気にはなれなかった。落ち込んで身を引いたら、彼から逃げ出したあの頃と同じになりそうで。

 私だけが黙々とデザートを口に運ぶと、静観していた社長が控えめにははっと笑った。

「いいね。やっぱり気に入った」

 どこか満足げに呟いた彼は、バニラのように甘い笑みを湛えて私に手を差し出してくる。

「王子は村娘に甘く迫る、っていうのがすでに決まっている設定なんだ。これから僕も、君を落とすつもりで動くから。よろしくね、香瑚ちゃん」

 初耳の情報に〝んっ?〟と首をかしげたくなると同時に、名前で呼ばれてどきりとする。あくまで仕事だよね?

 いや、須栗社長ほどの人が本気で私に迫るわけないかと思い直し、「よろしくお願いします」と手を取る。握手する私の隣では、なんだか重いため息が聞こえてきた。