脇役だって、恋すれば

 決意してぱっと顔を上げ、ふたりに宣言する。

「私でよければ、やらせてください」
「おい」

 眉根を寄せて止めようとする新涼くんに、自分の思いを伝える。

「私、今も昔も新涼くんにいろんなことをしてもらってばかりで、なにも返せていないから。少しでも役に立ちたい」
「ダメだ」

 ぴしゃりと断ち切られ、少々びっくりして口をつぐむ。

「芦ヶ谷にそんなことしてほしいなんて思わない。俺も恩を売ってるわけじゃないんだから」

 ほんの少し怒っているような、そっけなく冷たい口調で制され、胸に痛みが走る。

 ……私には助けられたくないって突き放された気分。彼のためになにかしたいと思うのは迷惑なのかな。

 わだかまりもなくなってきて、またあの頃みたいに戻れるかもって、一瞬でも自惚れてしまった。そんなに簡単なことじゃないのにね。

 落ち込みそうになったものの、じわじわと反発心が湧いてくる。それは新涼くんにではなく、彼の一言一句に勝手に振り回されている自分に対するもの。

 下唇を噛み、彼にどう言われようといいじゃないかと、弱気になる自分を叱咤する。

「社長も、彼女を巻き込まないでくださ──」
「いいえ、やります」