脇役だって、恋すれば

 周りからよく話しかけられるのも、高校時代から変わっていないんだな。でも、恋人はいないみたい。

 少しだけほっとしている自分を隠して、真面目に彼のお悩み相談に乗る。

「そのルートだけ別のライターさんに頼むっていうのは?」
「僕も同じ提案をしたけど、青羽のプライドが許さないらしい」
「そこだけ別の人にすると違和感が出そうで」

 解決策にはならず、うーんと唸る私のところへ、最後のドルチェが運ばれてくる。

 フルーツが散りばめられたアイスクリームと小さなティラミスの盛り合わせで、テーブルの上が華やいだその時、社長が見兼ねたように言う。

「ほら、埒が明かないだろ。だから芦ヶ谷さんに協力してもらうんだよ。僕が王子役をやるから、彼女に村娘になりきってもらえばいい」
「「はっ!?」」

 明後日の方向から飛んできた提案に、またしても私たちの声が重なった。

 社長が王子で、私が村娘になりきる?

 演劇でもやるの?なんておバカな考えがよぎったものの、社長は魅惑の微笑みを私に向けてくる。

「僕とラグジュアリーなデートをしよう」
「デ、デート!? いったいなんで……社長には恋人や奥様はいらっしゃらないんですか?」