脇役だって、恋すれば

 自分に言い聞かせてない?と半笑いになる私。すると、オーダーを取り終えて戻ろうとする女性スタッフに、新涼くんが「すみません」と声をかけた。

「コース料理の中にそば粉を使ったものはありますか?」

 彼の問いかけにはっとする私。女性スタッフは慣れた様子で、「ただいま確認してまいりますので、少々お待ちください」と快く返事をしてその場を離れていく。

「新涼くん……」
「確か、芦ヶ谷ってそばアレルギーだったよな?」

 さらりと言う彼に驚いた。

 確かに私はそばがダメで、高校時代にそれを話したこともある。けれど、まさか今でも覚えているなんて思わなかったから。

 ぽかんとしたままの私に、須栗社長が申し訳なさそうに言う。

「アレルギーだったか。すまない、気が回らなくて」
「あ、いえ! 私が自分で聞かないといけないのに、イタリアンだからって気を抜いてました」

 すべてのお店のメニューにアレルギー表示があるわけではないので、外食は気をつけなければいけない。イタリアンではあまり使われないとはいえ、そば粉のパスタなどが稀に出てくることもあるよなと反省する。

「でも、まさか新涼くんがそれを覚えてたとは……」
「覚えてるよ。大事なことだから」

 当たり前のように微笑む彼に、胸がじんとするのを感じながら「ありがとう」と言った。