脇役だって、恋すれば

 ゲームしても身が入らなさそうだし……と、手に取ったスマホを眺めていた時、ちょうど着信が来て母の名前が表示された。

 姉と私がどちらも家を出てからいまだに寂しいらしく、電話はわりと頻繁にかかってくる。姉はいつ時間があるのかわかりづらいから私にかけてくることが多くて、正直“またか”と思ってしまう。

 が、それは声に表さないようにしている。今日も同じく「もしもし」と明るく出ると、母のはきはきした声が聞こえてきた。

《ニュースで電車止まってるって見たけど大丈夫? 香瑚が使ってる路線でしょ》
「うん、帰宅難民になりかけたけど大丈夫だった。車で送ってもらえたから」
《そう、ならよかった》

 安心した様子の彼女は、少し世間話をした後、とってもわくわくした調子で別の話に切り替える。

《そうそう、亜瑚から聞いた? 今度ドラマで主役をやるんだって! 深夜だけど地上波だし、香瑚も見てあげてね》
「へぇ~すごいね、お姉ちゃん。どんどん活躍して」

 ついに主演ドラマが始まるのか。いずれそうなるだろうと予想していたからそこまで驚きはしないけれど、一応声を弾ませてみた。