脇役だって、恋すれば

「番号変わってない? また連絡する」

 再び繋がることになりそうで、胸がざわめく。これでいいのかはわからないけれど、今は拒否する気にはならなくて「うん」と頷いた。

「じゃあ、風邪ひくなよ」
「新涼くんもね。荷物も上着もありがとう」

 引き出物の袋をひょいと上げて感謝すると、彼の瞳がほんのり憂いを帯びた色に変わる。

「今日、会えてよかった」

 控えめな笑みを浮かべて短いひと言を告げ、新涼くんは踵を返した。私はテンポの早い鼓動を感じながら、彼が乗り込んだ車が去っていくのを見送る。

 ……ほんと、甘めなセリフをさらっと言っちゃうんだから。こっちはそのたびドキッとさせられているというのに。

 私も、会えて嬉しい気持ちは確かにある。別にこれからなにがあるわけでもないのに、彼とまた繋がりが持てたことを心のどこかで喜んでいる自分がいるのだ。

 なにか期待しているんじゃないでしょうね、と自分に釘を刺す。高校時代の二の舞にならないように気をつけないと。

 二階にある自分の部屋に入り、こぢんまりしたリビングに荷物を置いて、ソファにぼすっと腰かけた。

 新涼くんとの再会がインパクトありすぎて、結婚式がずっと前のことみたいに感じる。こんなに心が激しく動いたのは久々だ。