脇役だって、恋すれば

「そんな、大袈裟だなぁ」

 私は軽く笑ってしまったけれど、彼は本当に満たされたような表情をするので、こちらまで胸がほっこりと温かくなった。

 すると、須栗社長が再びミラー越しに私に視線を送って口角を上げる。

「芦ヶ谷さんのこと気に入った。やっぱり一緒に仕事したいな。まだ少し先だけど新作の発表会をするつもりだから、それの場を作ることってできる?」
「もちろんできます! 私たちでいいんですか?」
「ああ。僕たちが作る作品のよさを十分理解してくれてる人に任せたいから」

 社長の言葉に胸が弾む。自分が好きなものを好きだと声にしただけなのに、まさか仕事に繋がるなんて。

 なにがきっかけになるかわからないものだなと思いながら、前のめりになってお礼を言う。

「ありがとうございます! 一度社に確認して、また改めてご連絡いたしますね。私たちが引き受けることに決まりましたら、全力でお手伝いさせていただきます」
「期待してるよ」

 前向きなひと言をもらえて、いつにも増してやる気が出る。私の一存では決められないけれど、ライトフルならお断りすることはまずないだろう。

 わくわくしていた私は、隣からの視線を感じてはっとする。振り向くと、窓枠に肘をつく新涼くんが「よろしく」と微笑んでいた。