脇役だって、恋すれば

 饒舌に話す私に彼は最初ぽかんとしていたものの、嬉しそうに頬が緩んでいく。須栗社長の声も懐かしむように柔らかくなる。

「へえ、そんな初期のやつを。嬉しいな。それをきっかけにライトフルの知名度がだんだん上がってきたんだよ」

「あの頃は手探り状態だったけど、だからこそ大胆なこともできて楽しかったですよね。皆それぞれの意見を譲りたくなくて、たくさん言い合いましたし」

「そうそう、青羽は特に遠慮がなかった。あの展開もこの展開も絶対に必要だって。結果予算内に収まらなくて、資金のために自分たちの生活を切り詰めるハメになるっていう」

「懐かしいな、もやし生活……」

 ふたりとも当時を思い返して話が盛り上がっている。

 新涼くんは須栗社長がライトフルを立ち上げた時からの付き合いのようだし、気を遣わない仲なのも、完成度の高いゲームを生み出し続けているのも納得する。

「だから御社のゲームはどれも面白いんですね。万人受けする感じではないと思うんですけど、コアなファンが多いというか……って、すみません! 失礼なことを」
「いや、俺たちにとったら褒め言葉だよ」

 新涼くんはまったく気にせず、むしろ感激した様子で言う。

「この仕事してきてよかったって、今一番感じてるかも。ありがとう」