脇役だって、恋すれば

 社交辞令かもしれないけれど、私は純粋に嬉しくて本心でそう返した。隣に座る新涼くんも、こちらに笑みを向けて言う。

「ウチのゲームもやってくれてるんだ」
「もちろん。ライトフルに限らずいろいろプレイした中で、『ぼくのマーマレード』が一番好きなの。勇気をもらえたから」

 一風変わったタイトルを口にすると、新涼くんはみるみる真顔になって目を見開いた。

 驚くのも無理はないかもしれない。ライトフルの中では初期の作品で、ヒットしたとは言えないマイナーなものだから。

 就職したばかりでまだ仕事の要領がつかめず落ち込むことも多かった頃、例のごとく現実逃避でたまたま目に留まったそれをやったら大当たり。とても面白くてハマってしまったのだ。

「記憶喪失の主人公が、いろんな人に話を聞きながら記憶を取り戻していくのが面白かったな。最終的に自分が世界を滅ぼそうとしていた悪で、モブの中にそんな自分を救ってくれる大切な人がいるって気づくのよね。そのストーリーがすごく深くて、ラストは普通に泣いたもの」

 バトルはそんなに多くないのにハラハラドキドキして、最後はほっこり泣けるのがとてもよかった。これもモブキャラが大事な役割を果たしているし、さすがは新涼くんが考えた物語だ。