脇役だって、恋すれば

「新涼くんの講演、ちょっとだけ聞いてた」

 したり顔で言うと、彼はちょっぴり気恥ずかしそうに「やっぱり……」と声を漏らし、口元に手の甲を当てた。照れている新涼くん、レアだし可愛い。

「俺、本当はああいうの苦手なんだよ。社長にどうしてもやってくれって頼まれて仕方なくね」
「だと思った。らしくないことしてるなって」

 少し茶化してくすっと笑う。

 高校時代の彼も、人前で話すような係や委員会は進んで引き受けたりしなかったから、意外だなと思ったのだ。とはいえ、やるとなったらきっちり実行するところが男らしい。

「信念を持って全力で作ってるのがわかったし、カッコよかったよ。夢を叶えたことはもちろんだけど、それが大ヒットするなんて本当にすごいじゃん。なんか私まで誇らしくて、後輩にも自慢しちゃった」

 講演を聞いた後、持ち場に戻って『大人気の講師は私の同級生だった!』とめぐちゃんに話したのだ。初恋を思い出して切なくなったものの、それ以上にやっぱり彼の活躍が嬉しかったから。

 新涼くんはご両親が厳格で、一流企業への就職や公務員になることを望まれていたそう。お兄さんがその道を進んでいるのもあり、シナリオライターというクリエイティブな仕事はできないだろうと彼は諦めていた。