脇役だって、恋すれば

「やっぱり、俺が相手じゃ嫌? それとも、彼氏が心配するとか」
「いや、違うの! あの……久々に会ったから、緊張してるだけ。彼氏なんていないし」

 咄嗟に否定して、ざっくりと気持ちを明かした。気まずいだけで嫌なわけじゃないのだ、決して。

 ほんのり頬が熱を帯びている気がして俯き気味になると、新涼くんは安心したような笑みをふっとこぼす。

「俺もドキドキしてる。一緒だよ」

 さらりと言われ、私は思わず顔を上げた。彼はさりげなく手を伸ばして私の引き出物の袋を持ち、「駅に行こう」と歩き出す。

 ドキドキ? 私相手に? そんな感じはまったくしないけれど、新涼くんも一応再会して動揺しているのかな。

 とりあえず、時間が解決してくれたのか普通に話せているので、一緒に帰るくらいは問題ないだろう。高校時代の話は極力しないようにしよう。

 近くのバス停に向かって歩き始めると、昼間は暖かかった空気がだいぶ冷たくなっているのを感じる。ゴールデンウィークを過ぎてもまだ朝晩は肌寒く、持ってきたカーディガンを羽織るも夜風が吹くと少々震えてしまう。

 夜に長時間外にいる予定じゃなかったからな……と思いつつ腕をさすっていると、肩にふわっとジャケットをかけられた。新涼くんのスーツの上着だ。