脇役だって、恋すれば

 新涼くんはまだご飯を食べていないだろうから、食事をしに行きたいのかもしれない。私はもうお腹いっぱいだし、気まずすぎてちゃんと話せるかどうかわからないし、なにより心臓がもたなそう。

「あーえっと、ごめん、私はもう帰……れないんだった~……!」

 断りかけた時、先ほどの問題を思い出してがっくりとうなだれた。「どうした」と困惑した様子の彼に、決まりの悪さを感じながら苦笑を浮かべる。

「電車止まってるんだって、京葉線。今日はもう動かないみたい」
「マジ? だから困ってたのか。つーか、俺も京葉線なんだけど」

 困っている人に声をかける彼は本当に優しいなと、その人柄を改めて尊敬しつつも、家が同じ方向だということに反応してしまう。彼も帰宅難民になるのだから。

 新涼くんはさっそくいくつかのタクシー会社に問い合わせるも、やはり予約でいっぱいらしい。スマホを耳から離して、ため息混じりに首を横に振った。

「どこもダメだな。バスにするか」
「うん。絶対混んでるけどしょうがないね」
「話してれば暇潰しくらいにはなるだろ」

 そう言われてはっとする。自然に一緒に帰る流れになっていた……。

 心臓が早鐘を打ち始め黙りこくる私の顔を、彼がどことなく不安げな表情で覗き込む。