畏まってぺこりと頭を下げる私に、彼は小さく噴き出して「久しぶり」と微笑んだ。落ち着きのある笑みはあの頃とそんなに変わっていなくて、胸がぎゅっと締めつけられる。
新涼くんは高校時代の気まずさなど感じていないような調子で、私の姿を見下ろして問いかける。
「結婚式だったのか?」
「あ、うん、秋華の結婚式だったの。覚えてる? 同じクラスだった」
「秋華……って、稲森さん? へえ、それはめでたいな」
同級生の式が行われている場所に偶然居合わせていたというのに、相変わらずリアクション控えめでとても淡々としているように見える。そんな彼がさっきは目を丸くしていたから、私との再会は相当驚いたのだろう。
彼はスーツ姿でビジネスバッグを持っているところからして、ここで仕事でもしていたのだろうか。
「新涼くんは仕事?」
「ああ。打ち合わせが長引いて、今お偉いさんを見送ったところ」
そう答えた彼は、なにか考えるように目線をさ迷わせた後、再び私をまっすぐ捉える。
「芦ヶ谷も帰るなら、ちょっと付き合わない?」
予想外のお誘いにドキッとして、「えっ!?」と声が裏返った。
ちょっと立ち話をしたら普通にサヨナラすると思っていた……。どうしよう、久々に会っただけで動揺しているのに、これ以上ふたりきりで過ごせるだろうか。
新涼くんは高校時代の気まずさなど感じていないような調子で、私の姿を見下ろして問いかける。
「結婚式だったのか?」
「あ、うん、秋華の結婚式だったの。覚えてる? 同じクラスだった」
「秋華……って、稲森さん? へえ、それはめでたいな」
同級生の式が行われている場所に偶然居合わせていたというのに、相変わらずリアクション控えめでとても淡々としているように見える。そんな彼がさっきは目を丸くしていたから、私との再会は相当驚いたのだろう。
彼はスーツ姿でビジネスバッグを持っているところからして、ここで仕事でもしていたのだろうか。
「新涼くんは仕事?」
「ああ。打ち合わせが長引いて、今お偉いさんを見送ったところ」
そう答えた彼は、なにか考えるように目線をさ迷わせた後、再び私をまっすぐ捉える。
「芦ヶ谷も帰るなら、ちょっと付き合わない?」
予想外のお誘いにドキッとして、「えっ!?」と声が裏返った。
ちょっと立ち話をしたら普通にサヨナラすると思っていた……。どうしよう、久々に会っただけで動揺しているのに、これ以上ふたりきりで過ごせるだろうか。



