脇役だって、恋すれば

「香瑚が日本にいない間に、ちゃんと準備を整えておいた。フリーでの仕事が安定しないと、お前も家族も不安にさせるだろうから。帰国に間に合ってよかった」

 それってまさか、とピンときた瞬間、ポケットから小さな箱が取り出された。蓋を開けられ、目を見開く。

「やりたいことは、香瑚をお嫁さんにすること」

 そのひと言と、上品な宝石のまばゆさに息を呑む。青羽は私の左手を取り、細いリングを薬指に滑らせる。

「俺と結婚して。これからは夫婦として、一緒に生きていってほしい」

 夢見たプロポーズに、感極まって涙が込み上げた。

 彼も私との将来を考えてくれていると信じていたけれど、こうしてはっきり言葉にしてもらえたのは、やっぱりすごくすごく嬉しい。

 右手で濡れた頬を拭い、震える情けない声で「ありがとう」と紡ぐ。

「たぶん今、世界で一番幸せだと思う、私」

 人生の主人公は自分自身だって、今は強く実感できる。私をヒロインにしてくれるのは、この人しかいない。

 大袈裟じゃなく本気で世界一だと思っていると、青羽は穏やかに笑って私を抱き寄せる。

「これからもっと幸せになれるよ。ふたりなら」

 愛しい胸にくっついて、何度も頷いた。最高の未来を確信して。