脇役だって、恋すれば

 あの一件の後、顔を合わせた時はかなり気まずくてふたりきりになるのは避けていたものの、お互い大人なので表面上は普通にしていた。

 今も「お疲れ様です」と挨拶だけして視線をステージに戻すと、藤井さんも同じほうを見ながら言う。

「美しいですね、亜瑚さん。やっぱり姉妹とは思えな……なんでもないです」
「ほぼほぼ言ってますよ」

 ほらー、ふたりになるとこうなんだから。もはやショックも受けず、呆れ気味で歪んだ笑みを浮かべた。

 でも、彼女からはなんとなく前ほど攻撃的な雰囲気は感じない。今日でこの仕事も最後だし、できるなら気持ちよく別れたいとも思う。

 藤井さんは嫌みを言うでもなく静かにステージを眺めているので、私は思いきって口を開く。

「……私はただの脇役にすぎないって、昔からずっとそう思ってきました。藤井さんが言ったみたいに、姉が一緒にいると私の存在も頑張りも霞んじゃうよなぁって、虚しく感じてたんです」

 私より少し背の低い彼女が、意外そうにちらりとこちらを見上げる。

「でも今は、こんな自分も大事な存在なんだって思えるようになりました。今日の演出みたいに、魅力を引き出すのが私の役目で、それは決してどうでもいいものじゃないんですよね」