脇役だって、恋すれば

 そして、メディアに出る姉の姿をこんなに近くで見守るのも初めてだ。

 先ほど顔を合わせた時も話す余裕はなく、軽く挨拶をしただけ。彼女の態度はいつも通りだったけれど、やはり醸し出すオーラが普段とはどこか違う。

 司会者や他のゲストと一緒に姉もステージに立ち、発表会が始まった。

 まず社長である慶吾さんが挨拶をしたが、堂々とした振る舞いはさすがだった。袖に戻ってきた時、こちらに向かってにこりと微笑みかけるところも余裕があって素敵だし、恋人がいないのが不思議すぎるなと改めて思う。

 そして以前私たちも見せてもらった最新映像を流す前に少しゲストのトークがあり、その中で今人気の関西のお笑いコンビが姉に質問する。

「亜瑚さんってゲームされるんですか?」

「あんまりしないですね。あ、でもあれは好きですよ! 名前なんだっけ。あのー、車に乗って甲羅ぶつけ合ったり、コースから落ちるとお金取られたりする鬼畜レース」

「言い方エグいけど、めっちゃわかりやすい」

 姉の発言と芸人さんのツッコミに、会場から笑いが起こった。私も思わず噴き出してしまったけれど、彼女がこう続ける。

「昔、妹と遊んだ覚えがあるんです。私がレースに勝つと妹がすごく喜んだから、上手になりたくて練習してました」