脇役だって、恋すれば

「青羽と再会する前に、社内公募があって応募してたんだ。ずっと海外で生活してみたいと思ってたから。その合格通知がこの間来て、行くことに決めたの」

 香瑚はゆっくり話してくれた。亜瑚さんとのことがあって、誰も知っている人がいないところで生きていきたいと思っていたら、それがいつの間にか海外への憧れになっていたのだと。

「まさか青羽と再会して、しかも両想いになれるなんて思わなかったから、私もすごく悩んだ。せっかく一緒にいられるようになったのに、また離れていいのかって」

 彼女の眉が心底つらそうに寄せられる。俺も似たような顔になっているかもしれない。もう離れることはないと思っていたのだから。

 先に再会できていたら、海外赴任の希望を出さなかっただろうか。タイミングが少し違っていたらずっと一緒にいられたのではないかと考えてしまうが、彼女は「でも……」と言葉を続ける。

「それでも、諦められない自分がいる。このチャンスを蹴ったら、きっと後悔すると思う」

 香瑚は苦しげにしながらも、その表情には決意が表れていた。

 海外で生活するのは彼女にとっての夢で、どうしても捨てられない部分なのだ。チャンスが巡ってきたのは運命なのだし、たらればを言っても仕方がない。

 心が求めているものを無視できないのは、俺自身よくわかっている。