脇役だって、恋すれば

「今が一番幸せだって、これからもずっと思わせてあげる。香瑚の大事な日には、俺がいつもそばにいたいんだ」

 ああ、結局プロポーズのような言葉が出てきてしまう。ふたりで生きる未来を確実なものにしたいという、欲の表れなのだろう。

 引かれていないだろうか、と目線を上げた俺は、すうっと真顔になった。ずっと笑っていた香瑚が、なぜか急に泣きそうな顔になって腕時計を見つめているのだ。

「香瑚?」

 どうしたんだ?と戸惑う俺に、彼女は眉尻を下げたまま口角を上げる。

「本当にありがとう。すっごく嬉しいし、私も同じ気持ちだよ。ただ……ごめん、がっかりさせるかもしれない」

 がっかりさせる……って、いったいなにを言い出そうとしているのか。急激に胸がざわめくのを感じながら彼女を見つめていると、潤む瞳と視線が交わる。

「私、海外赴任が決まったの。三カ月後には、シドニーに行く」

 ──まったく予想していなかった告白に、心臓が奥のほうでドクンと重い音をたてた。まさか、海外へ行ってしまうなんて。

「……どのくらい?」
「短くて二年、かな」

 憂いを帯びた声で答えた彼女の、長いまつ毛が影を作る。想いが通じ合った今、二年という月日はとてつもなく長く感じる。