脇役だって、恋すれば


 翌週の金曜日、俺は珍しく定時ぴったりに仕事を終え、足取り軽く会社を後にした。今日は絶対に早く帰ると決めていたのだ。初めて祝う香瑚の誕生日だから。

 高校時代もこの頃には仲よくなっていたのに、誕生日だったと知ったのはだいぶ過ぎてからで人知れず後悔していた。今日こそは恋人らしく目一杯祝って、彼女を喜ばせてあげたい。

 待ち合わせの駅でほんの数分待っていると、オフィスカジュアルなパンツスタイルの香瑚が現れた。この間のワンピース姿も、会ってすぐ抱きしめたくなるくらい可愛かったが、今日も大人の魅力を感じて素敵だ。

 香瑚ならパジャマだろうとジャージだろうと、とにかくなんでも可愛いのだとのろけつつ、表面上は紳士的な笑みを浮かべる。

「お疲れ。誕生日おめでとう」
「ありがとう! なんかもう青羽に会えただけで満足」

 にっこりと笑顔でそんなふうに言われ、愛おしすぎて胸がぎゅうぎゅう締めつけられた。紳士の皮があっさり剥がれるだろうが……と、ニヤけそうになるのを必死に堪える。

「これだけで満足しないでくれよ。今までで一番幸せな誕生日だって思わせてみせるから」

 大口を叩いてしまったが、その意気込みは本物だ。香瑚は嬉しそうに「やっぱりすでに幸せです……」と呟くので、俺はついさっきと同じことを繰り返していた。