脇役だって、恋すれば

「香瑚と付き合うことになりました。本当に遠慮しなくてすみません」

 まずその報告をすると、彼は特別驚いたりショックを受けたりした様子もなく、「そうか」と微笑んだ。

「それと……今やってる案件を終えたら、ライトフルを退社しようと思ってます」

 今日の話の本題はこちらのほうだ。お互いにカウンターのほうを向いたまま、俺は話を続ける。

「社長にはたくさん世話になりました。いろいろな経験を積ませてもらって感謝してます。もっと広い世界で、その力を試してみたくなったんです。ずっと迷っていたけど、彼女のおかげで踏ん切りがつきました」

 香瑚が看病しながら話を聞いてくれて、自分がどうしたいかがはっきりした。迷いを断ち切らせてくれたおかげで、今こうして正直に気持ちを伝えることができている。

 社長はどんな反応をするだろうか。若干の緊張と気まずさを紛らわせようと、枝豆に手を伸ばしたものの……。

「いや~ようやく決断したか! まったく、いつになったら切り出すんだろうと思ってたよ」

 彼から返ってきたのは意外にも陽気な声で、笑顔も見せているので俺は拍子抜けした。呆気に取られて、枝豆をぽろりと落としそうになる。