脇役だって、恋すれば

 社長に連れていってもらうのは、最近はこじゃれた店ばかりだったので、壁に貼られたメニューを見ると懐かしい気持ちになる。

「久しぶりだな、ここで飲むの」
「ですね。ライトフルを立ち上げた頃は、よくここで作戦会議してたのに」

 初期の仲間たちと一緒にここの座敷であーだこーだと話し合った頃を懐かしみながら、お互いに自然な笑みをこぼしてモツ煮を口に運んだ。

 当時が一番楽しかった気がする。まだまだゲームの人気も、会社の資金もなくて危なっかしい時期だったにもかかわらず、皆で和気あいあいとやっていた日々はとても充実していた。

 今と違って行き当たりばったりなところも多かったのに、予想外にいいものが出来上がったりして、そういう未知な部分にわくわくした。

 皆で作り上げているのは今も同じなのだが、あのわくわく感には勝らない。社長と俺たち社員の距離もどこか離れてしまったように感じる。

 会社が大きくなれば仕方ないことだとわかっているのに、時々言い様のない寂しさに襲われる。

 でも、そんなセンチメンタルな気分になるのは俺だけなのか、社長は淡々と切り出す。

「じゃあ、さっそく青羽の話とやらを聞こうか」

 ジョッキをぐっと握り、ビールを喉に流してひと息ついてから口を開く。