脇役だって、恋すれば

 悲しそうに眉を下げる彼女は、俺のことを想ってくれているのだろうか。香瑚を攻撃したのは、亜瑚さんの妹という妬みからかと思ったが、俺と仲がいい彼女への嫉妬のせいだったのかもしれない。

 この時に初めてそう気づいたが、もちろん俺の気持ちはなにがあろうと変わらない。

『ごめん。彼女が好きだから、大事にしたいんだ』

 ストレートに返すと、藤井さんはとてもショックを受けた様子で力なくシャツから手を離した。しかしそれだけでは引かず、挑むような目で俺を見つめる。

『今夜、社長のマンションで会うみたいですよ。さっきふたりで話していて、芦ヶ谷さんが絶対行くって言ってましたから、確かだと思います』

 そんなのは嘘だろうと信じてはいなかったが、どこか確信しているような彼女の迷いのない瞳が気になった。

 社長が誘ったという可能性は大いにある。なにせ彼は実際、香瑚に気があるようだから。

『ふたり、絶対親密じゃないですか。いくら新涼さんでも、すべて持っている社長には敵わないかもしれない。なのに……!』

 この恋は不毛だと言いたいのだろうか。

 確かにスペックでは社長には勝てやしない。だからって、引く気は毛頭ないのだ。