脇役だって、恋すれば

『お前の姉とか、周りの声とか、そんなのはどうでもいい。俺が一緒にいたいと思うのは芦ヶ谷なんだよ』

 まさかの返答に、息が止まりそうになった。

 姉はどうでもいい……? じゃあ、男子たちに言っていたあの言葉の意味はなんなの? 本当に、私といたいと思ってくれているの?

 半信半疑な気持ちでゆっくり彼を見上げる。熱くて震えるのは握られた手か、それとも心か。

『他の誰かじゃなくて、芦ヶ谷がいい』

 眼鏡のレンズ越しに目を見て、はっきりとそう言ってくれた。それは私が一番欲しかったもので、見開いた目にじわっと涙が込み上げた。

 彼の瞳に映っているのは、間違いなく私。彼は私のことをちゃんと見てくれた人。

 あの時そう信じられていたら、今と違う未来があったんだろうか──。