脇役だって、恋すれば

「高校の夏休み、電車に乗って海を見に行っただろ」
「あ、うん。駅から出られなかったところね」

 ホームから見た海はもっと近かったけれど、夕日に照らされる景色は今とよく似ていた。隣の彼も、あの時のままで麗しい。

「海を眺めてる香瑚がすごく綺麗で、漠然と思ったんだよ。〝いつか葉山の海もこの子に見せてあげたい。一緒に見たい〟って。あの時にはもう、完全に落ちてたんだろうな」

 ……青羽がそんなふうに感じていたなんて。今日それを実現してくれたのだと思うと、なんだか胸が熱くなる。

「モデルにしたのはこの場所だけじゃない。ゲームの世界が夏から始まるのも、夜の公園を散策するのも、主人公たちが夕焼けの海を眺めるのも。全部、香瑚との思い出から作った」
「えっ──」

 まさかの事実に目を丸くし、綺麗な景色から、負けず劣らず美しい彼の横顔へと目線を移す。

 確かに、ストーリーや登場するものと、私たちの思い出に共通点は多い。言われなければ気づかなかった。

「主人公がサブキャラの女の子に救われて、新しい人生を始めるストーリーもそう。香瑚も脇役なんかじゃなくて、誰かにとってはすごく大きな存在になるんだってことを伝えたかった。自信を持ってほしくて」

 見開いた目に、じわっと熱いものが込み上げる。あのストーリーに、私へのメッセージが込められていたなんて。