脇役だって、恋すれば

 そのまま唇を近づけようとしたところで、思い留まったように手を離す。

「やっぱり我慢する。絶対もっとすごいことしたくなるから」

 彼は自嘲気味な笑みをこぼし、私の頭をくしゃっと撫でて座席に背中を預けた。私はぼっと顔が熱くなる。

 もっとすごいことって、キス以上のあれやこれや……だよね? いかがわしい妄想をしてしまうんですが!

 運転手さんの存在をよそに、青羽は熱で、私は生殺しにされたもどかしさと甘い妄想で、お互いに浮かされていた。


 青羽が住むマンションは、私の最寄り駅から一駅離れたところにあり、意外にも近くて驚いた。レンガ調の外観は柔らかな雰囲気があり、内装もナチュラルテイストでとても落ち着く。

 ちょっぴりふらふらしている彼の手を取って三階に上がり、男性らしい無骨な1LDKの部屋にお邪魔した。

「ちゃんと掃除してから招待したかった……」
「そんなに散らかってないじゃない」

 無念そうにぼやく彼にくすっと笑いつつ、とりあえず冷房をつけてベッドに座らせる。

 部屋には服や雑誌が出しっぱなしになっているけれど、全然汚くはない。観葉植物や間接照明がおしゃれで、かと思えばゲームのグッズが飾ってあったりして遊び心がある。

 こうして青羽のテリトリーにいられるのは、とっても貴重で嬉しい。