自己肯定感を上げられたのは、間違いなく新涼くんのおかげだ。彼だけは私を〝亜瑚の妹〟じゃなく、〝香瑚〟として見てくれたから。
けれどそれは、陰口を聞いただけで揺らいでしまうような脆い自信。私はヒロインにはなれないんだから、勘違いしてはいけないと思い始めていた。
その矢先だった。男女数人で廊下を歩いていた新涼くんが、『もう少し芦ヶ谷と仲よくなったら亜瑚さんに会えるかもしれないから、おとなしく待ってろ』と言うのを耳にしたのは。
死角に身を隠して盗み聞きしていた私は、胸が激しくざわめいて仕方なかった。彼が私と親しくしていたのは、姉に近づくためだったというのだろうか。
『お前が芦ヶ谷と一緒にいるのは、結局そのためかよ。悪いヤツ~』
なにが楽しいのか、他の男子が笑いながら言い、急激に心が冷えていった。
なんだ……勘違いした自分が本当にバカだった。よく考えれば女子が言っていた通りなのに。メリットがなければ、新涼くんほどの人が地味な私と仲よくするはずがない。
でも、浅はかだよ。あんなに優しくあったかい言葉をかけて、私が好きになるって少しも考えなかった? あなたと一緒にいた時間は、人生で一番と言っていいくらい大切だったのに……。
けれどそれは、陰口を聞いただけで揺らいでしまうような脆い自信。私はヒロインにはなれないんだから、勘違いしてはいけないと思い始めていた。
その矢先だった。男女数人で廊下を歩いていた新涼くんが、『もう少し芦ヶ谷と仲よくなったら亜瑚さんに会えるかもしれないから、おとなしく待ってろ』と言うのを耳にしたのは。
死角に身を隠して盗み聞きしていた私は、胸が激しくざわめいて仕方なかった。彼が私と親しくしていたのは、姉に近づくためだったというのだろうか。
『お前が芦ヶ谷と一緒にいるのは、結局そのためかよ。悪いヤツ~』
なにが楽しいのか、他の男子が笑いながら言い、急激に心が冷えていった。
なんだ……勘違いした自分が本当にバカだった。よく考えれば女子が言っていた通りなのに。メリットがなければ、新涼くんほどの人が地味な私と仲よくするはずがない。
でも、浅はかだよ。あんなに優しくあったかい言葉をかけて、私が好きになるって少しも考えなかった? あなたと一緒にいた時間は、人生で一番と言っていいくらい大切だったのに……。



