脇役だって、恋すれば

『その方はあなたのとても大切な人なんですネ。愛はなにより大事デス。そちらを優先してクダサイ』と言ってくれた彼は、めちゃくちゃ人がいい。次回以降も絶対この教室に通おう。

 意味深な笑みを浮かべて『ケイゴは残念でしたけどネ~』とも言っていたので、彼とは予想以上に仲がいいのだとわかった。共通の話題があると慣れないこの場でも話が弾みそうだし、慶吾さんにはいろいろと感謝だ。

 レッスンを延期にした後、帰宅ラッシュの電車で帰るのは酷なので、近くでタクシーを拾って青羽のマンションへ向かう。その車内、隣に座る青羽の手を握って声をかける。

「つらくない? 寄りかかっていいよ」
「そんなにつらくはないけど、お言葉に甘えて」

 遠慮なく私の肩にこてんと頭を乗せる彼は、なんだか可愛くてほっこりする。目を閉じる綺麗な顔を見ると、確かにそこまでつらくはなさそう、というかむしろ幸せそうだ。

 風邪をひいた時は大抵喉の痛みから始まるタイプらしいが、今はただ怠いだけのようなので、最近の疲れが出たのかもしれない。

 身体が休めってサインを出してるんだろうな、と思いながら心地よい重みを感じていると、ふいに彼が口を開く。