脇役だって、恋すれば

「私も、大好き。ずっと好きだった」

 背伸びして涙ながらに告白する私を、頼もしい腕がしっかりと包み込む。大きな手は私の髪を愛しそうに撫で、唇は優しい声を紡ぐ。

「昔の香瑚も、すごく素敵だったから俺は惹かれたんだ。弱い自分と無理にサヨナラしなくたって、そのままでいいんだよ」

 昼間自分で言ったことを思い出し、はっとさせられた。

 変わらないとって言い聞かせていたけれど、弱い私も私なんだと認めるだけでいいのかもしれない。

『誰かひとりでもありのままの自分を受け入れてくれてるってわかると、それだけで自信って湧いてくるよね。香瑚の場合、そういう存在が新涼くんなんじゃないの?』

 ……秋華の言う通りだった。誰になにを言われても、こんな不完全な私を青羽がわかっていてくれさえすれば、それだけでいい。

 この腕と同じく、底なしに温かい彼の心に包まれて、涙が止まらなくなる。通り過ぎていく人々の好奇の視線も気にせず、私たちは気が済むまでしばらく抱き合っていた。