脇役だって、恋すれば

 会って想いを伝えたい。青羽の気持ちがどうであれ、もう告白など躊躇しないくらい好きという感情が膨れ上がっている。

 忙しい彼の迷惑になるかもしれないと遠慮していたけれど、レッスンが終わった後、数十分でいいから会いたい。

 スマホのマップ片手に英会話教室を目前にして、急激に恋しさを感じていた、その時。

「香瑚!」

 後方から名前を呼ぶ声が聞こえ、ぱっと振り向いた私は驚きで目を見開いた。歩道の向こうから、なぜか青羽が走ってくる。

「青羽!? なんで──っ」

 今まさに考えていた彼が目の前にやってきたかと思うと、腕を掴まれ、私は逞しい胸の中に飛び込んでいた。息が止まり、唖然とする。

「行くな」

 乱れた呼吸と、焦燥を滲ませた声が耳元で響いた。理解が追いつかず、目を白黒させる私。

「えっ……?」
「行かせない。他の男のところなんか」

 ……ん? 〝男〟?

 ぎゅっと抱きしめる力を強められ、心臓は激しく暴れるも頭の中にはたくさんのハテナマークが浮かぶ。青羽、なにか勘違いしている?

「ねえ、待って。男って?」
「そこ、社長のマンションだろうが」
「え?」

 少々荒ぶる声で言われてギョッとした。