脇役だって、恋すれば


 午後の仕事も無事終えた私は、その足で慶吾さんから紹介してもらった英会話教室へと向かっている。幸い仕事はスムーズにいき、電話してみたら予約も空いていたのでラッキーだ。

 正直、英会話教室はこれまで億劫で行かなかった部分もあるのだが、今日の一件で気持ちを切り替えたくなった。自分のスキルを磨くのも自信に繋がるはずだし、この悔しさをバネに新しいところに飛び込んでみようと。

 とはいえ、藤井さんとの会話を思い出すと胸がもやもやするのは変わらない。

 青羽を追いかけていった彼女は、あの後どうしたのだろう。また彼に言い訳したんだろうか。私のことを悪く吹き込んでいるかもしれない。考えても仕方ないのに、勝手な想像が浮かんでしまう。

 嫌だな……悪口を言われることだけじゃなく、他の女性が彼のそばにいることが。

 仕事仲間だとしても嫌だ。藤井さんというライバルが現れると、女性の存在はそこまで気にならなかったのに急に不安になる。

 彼のあの優しい笑みや言葉は私にだけ向けてほしいし、私だけを見ていてほしい。

「……会いたいな」

 ぽつりと本音がこぼれた。