脇役だって、恋すれば

「お待たせしました。ちょうど混雑してて、時間かかっ──」
「すみません、私はこれで!」

 田端さんがデザートを乗せたトレーを置こうとした時、藤井さんは弾かれたように立ち上がった。

 食べ終わった食器を持ち、「ちょ、ちょっと待ってください!」と慌ただしく青羽を追いかける彼女を、皆がぽかんとして眺める。

「藤井さん、いつもデザート食べるのにどうしたんだ? 持ってきちゃったよ」
「あ……私がいただいていいですか?」
「ええ、もちろん」

 ひとり言のように言う田端さんに聞くと、快く藤井さんの分を渡してくれた。食べ終えたら解散になっていたので、彼女になにがあったのか詳しくは聞かれず助かった。

 陰口を叩かれることはあっても、面と向かってあんなふうに攻撃されることはなかったから、多少なりともダメージを受けている。気にしないようにしても、嫌なものは嫌だし心は傷つく。

 藤井さんは嫉妬のせいで余計きつく当たったのだろうけれど、ナメられているみたいでものすごい悔しさもある。青羽が来てくれなかったら、感情を抑えられなかったかもしれない。

 心が荒ぶっているせいか、青羽の優しさを感じたせいか、込み上げてくる涙を堪えてスプーンを口に運ぶ。

 デザートビュッフェかと思うほどたくさん乗せてきた部長と先輩は、負けじと食べまくる私を不思議そうに見ていた。