脇役だって、恋すれば

「気にかけてくれてありがとう。でも本当に大丈夫。あの頃の弱い自分とは、もうサヨナラするから」

 姉のことでひねくれる自分を変えたいという、私の意思が伝わったのかはわからないけれど、彼は真面目な表情で「……わかった」と頷いた。そして、再び冷ややかな目を藤井さんへと向ける。

「藤井さんの信頼度、だいぶ下がったから頑張って上げてね」
「なっ、なんでですか!? 私はなにも──!」
「そうやって、自分はひとつも悪くないと主張するからかな」

 無表情で淡々と告げるも、その言葉の威力は結構なもので、藤井さんはぎくりとした様子で口をつぐみ、硬直した。

 すべて見抜いているかのような青羽は私を一瞥し、憂いを滲ませてふっと口元を緩める。

「香瑚が強がってる時、なんとなくわかるんだよ。俺にはね」

 私をどこまでも深く理解して包み込んでくれるような、彼の声が胸にじんわりと染み込んでいく。

 こんなに優しい人が、私の過去や姉との関係を勝手に言いふらしたり、ましてや誰かを利用したりなどしない。

 そう確信した瞬間に気持ちの糸が緩んで、ふいに泣きそうになった。

 その直後、男性陣が戻ってきたのに気づき、青羽は「またな」と声をかけて去っていく。藤井さんはいろいろなショックで固まったままで、私はぼやける視界に彼を映していた。