脇役だって、恋すれば

 そういえば、姉がライトフルに来た時、『妹さんの同級生がいますよ』と青羽を紹介した人がいたのだった。それが藤井さんだったのか。

 青羽は私の過去まで話していたっていうの?

「まあ、無理もないですよね。あの人がお姉さんじゃ、芦ヶ谷さんには勝てないでしょう。容姿も、性格も」

 嫌みな言葉を投げられ、一瞬私の中でなにかがぷちっと切れたような感覚を覚えた。

 また姉と比べられてうんざりだ。でも今は劣等感を抱くより、勝手に勝ち負けを争う関係にされていることに腹が立つ。

 あなたこそ、わかったようなことを言わないでもらいたい。

「そんな調子で亜瑚さんと一緒に仕事ができますかねぇ。あなたがどれだけ頑張っても、亜瑚さんに全部持ってかれちゃうのは目に見えてますよ。芦ヶ谷さん、この案件から降りたほうがいいんじゃないですか?」

 意地の悪い笑みを浮かべる彼女から目を逸らさず、テーブルの下でぐっと手を握った。

 少し前の私なら怯んでいたかもしれない。彼女の言う通り、姉と一緒に仕事するのは不安だったから。

 でも、もう姉を避けるのはやめて自分を変えようと決めた。それに彼女の言葉はどれも安い挑発だ。乗ってはいけないと気持ちを宥め、一度息を吸い込んで笑みを作る。