脇役だって、恋すれば

「それは怖い」
「でしょう。彼に逆らえなくて〝社長の犬〟って陰で呼ばれてる人もいるくらいですから」

 先輩が同意すると、田端さんは軽く笑って気になる言葉を口にした。私と同様、部長も首をかしげて繰り返す。

「犬?」

「すごく才能があって、ここよりいい条件でヘッドハンティングされてるのに、首輪をつけられてるみたいに行かせてもらえないって噂なんですよ。まあ、本当にいいシナリオを作る人なので、社長が手放したくないのもわかるんですけどね」

「へえ、人気なんですね」

 相づちを打つ部長の横で、私は誰が〝犬〟なのかをすぐに察した。

 青羽、そんなふうに噂されているの?

 確かに慶吾さんは『手放したくない』と言っていたけれど、青羽が嫌々ライトフルにいるとは思えない。作品の話をしているふたりは楽しそうで、信頼し合っているように感じたし……。

 腑に落ちないまま残りのハンバーグを口に運ぶと、藤井さんが田端さんにじとっとした視線を送ってたしなめる。

「田端さん、しゃべりすぎですよ」
「ああ、悪い。皆さん話しやすくてつい。ここだけの話にしておいてください」

 両手を合わせてオフレコを頼んだ田端さんは、切り替えるようにまったく違う提案をする。