脇役だって、恋すれば

『芦ヶ谷って意外と面白いね。こんなに趣味が合うとは思わなかった。また話させてよ』

 いつの間にかふたりきりになっていた教室でしばらく話してから、彼は穏やかに微笑んでそう言った。

 姉のこと以外で、私と話そうとする男子は本当に珍しい。嬉しかったけれど戸惑いのほうが大きくて、私はただ頷くだけだった。


 それからというもの、姉目当てで私に近づいてくる人たちを、新涼くんはさりげなく追い払ってくれていた。同時に、私たちは毎日挨拶をするようになり、少しずつ気楽に接することができるようになっていった。

 バスケ部に入っていた彼が引退して、時間ができたことも話しやすくなった要因のひとつだろう。ただ、きっとカッコよかったに違いない彼のプレーを見られなかったのは心残りだ。

 すぐに夏休みに入ってしまったけれど、連絡先は教え合ったのでメッセージは送れる。【元気?】のひと言でも届くと嬉しい反面、連絡が途絶えると無性に気になり、もどかしさを抱きながら受験勉強をしていた。

 そうしてやり取りをしていたら一緒に勉強する流れになり、一度だけ図書館で会った。

 勉強なんて建前で、ただ会いたい下心ばかりだった私は案の定集中できない。もっと話したいな……なんて思っていた時、新涼くんが『息抜きにどっか行かない?』と言った。