脇役だって、恋すれば

「今回もそうなら、演出だけでなく告知の画像もちょっとした工夫ができるんじゃないかと──」 「必要ありません」

 言い終わる前に、やや高圧的にも感じる冷たい声でばっさり切られ、私はギョッとして口をつぐんだ。いつも可愛らしい藤井さんのこんな声、初めて聞いた。

 こちらを振り向いた彼女は、にこりと口角を上げるも目が笑っていない。

「告知画像や動画はこちらで用意しますので」
「そ、そうですか……! 失礼しました」

 強張った笑顔で頭を下げると、彼女はふいっとそっぽを向いてさっさと歩き出す。私は心の中で〝えぇ……?〟と戸惑いの声を漏らした。

 藤井さん、どうした急に。私、なにか失礼なことを言ったかな。少し前に遡って自分の発言を振り返ってみても、心当たりがない。

 単に機嫌が悪かっただけ?と、困惑しつつ後についていこうとすると、後ろからぽんと肩を叩かれた。振り返ると、落ち着いた笑みを浮かべる慶吾さんがいる。

「お疲れ様。会場は見てきましたか?」
「社長……! はい、とても参考になりました」

 私だけでなく、藤井さんや部長たちも挨拶をする。そんな中、慶吾さんに「芦ヶ谷さん、ちょっと」と呼ばれ、一瞬ためらった。