脇役だって、恋すれば

 英語学習の電子書籍が入ったタブレットを持ち歩いているし、スマホにリスニングができるアプリも入れて毎日電車の中で聞いている。簡単な日常会話なら覚えたけれど、まだまだなので苦笑いを返した。

 慶吾さんは感心したように頷き、「初耳だ」とひとり言を呟く。そういえば、疑似デートの時もそこまでは話さなかったな。

「でしたら、英会話教室を営んでいる知り合いがいるので紹介しますよ。大人も気楽に通えるところで、周囲の評判も上々ですし」
「本当ですか? 社長のお墨つきなら気になります」
「後で詳しくお教えしますね」

 紳士的な笑みを浮かべる彼に、つい乗せられそうになってしまう。慶吾さんとは必要以上に親しくしたらいけないのに。

 ……まあ、でも別にデートとかじゃないし、紹介してもらうだけなら平気か。

 彼の後ろを歩きながらひとり考えていると、なにやら部長と先輩が私を挟むようにして近づいてきた。

「おい芦ヶ谷、なんか社長といい雰囲気じゃねーか?」
「えっ!?」
「僕も思いました。ふたりを取り巻く空気だけ違って見えるというか」
「特殊能力!?」

 両側からこそっと囁かれ、ぎくりとしつつ「普通ですよ、普通!」とごまかした。