脇役だって、恋すれば

「私の気持ちは変わりません。わかるんです、彼以外には心が動かないって。……本当に、すみません」

 心を鬼にして可能性がないことを伝え、もう一度お断りした。少ししてから、《そうか》とため息混じりに納得したような声が聞こえてきた。

《とりあえず、君の気持ちはわかったよ。会社で見かけたらまた声をかけると思うが、それは許してくれ》

 声から切なげに微笑んでいるのが伝わってきたので、胸の痛みがより強くなるのを感じながら「はい」と返した。慶吾さんは引き際もスマートだ。

 電話を終えて一度深く息を吐き出した私は、先ほど諦めた缶ビールを取りに行くため腰を上げた。冷蔵庫を開け、おしゃれなデザイン缶を見るたび、あの夜触れた指先の感覚を思い出す。

 もったいなくてまだ飲めていないそれの隣にある、定番の缶を取ってぷしゅっとプルタブを開けた。

 あの後、青羽からも連絡が来たものの、少し気を休めたい私は仕事が忙しいと言い訳をしてまだ会う約束はしていない。彼は遅れているシナリオを作るのに精一杯らしいので、ちょうどよさそうだけれど。

 よく冷えた缶を口へ運び、ここ一カ月で急に運命の歯車が動き出したなとぼんやり思う。