脇役だって、恋すれば

 役立ったのは私のアドバイスというより、疑似デートを試したこと自体が青羽にインスピレーションを与えたような気がする。とにもかくにも、突破口が見えたようでなによりだ。

「ようやくスランプから抜け出せそうでよかったです。もう疑似デートも必要なくなりましたね」
《ああ、〝疑似〟はね》

 妙に強調して言うので、私はぴたりと動きを止めた。次いで、真剣さが増した彼の声が聞こえてくる。

《よかったら来週、ふたりで会えないか? 今度は本物のデートで》

 再びされたお誘いで、鼓動が乱れる。電話してきた一番の理由はきっとこれだろう。

 もしまた誘われたら、どう答えるかはすでに決めていた。ぐっと手を握り、息を吸い込む。

「……すみません、慶吾さん。その約束はできません」

 無意識に頭を下げ、思いきってお断りした。別に告白されたわけではないのに、罪悪感と緊張でいっぱいになる。

 数秒の沈黙が流れた後、意外にも穏やかな声で問いかけられる。

《……好きになった? 青羽のこと》

 どうやら慶吾さんは感づいていたらしい。観察力もすごそうだし、私もわかりやすいみたいだから簡単だっただろうか。

 慶吾さんと一日過ごしてみて、彼に惹かれるどころか青羽への想いをしっかり自覚させられる結果となった。