脇役だって、恋すれば


 疑似デートから五日後の平日の夜、シャワーを浴びて缶ビールを飲もうと冷蔵庫に手を伸ばそうとしたところでスマホが鳴り始めた。

 一旦ビールは諦め、テーブルに置いてあったそれを見てドキリとした。慶吾さんの名前が表示されている。

 デート以来、メッセージのやり取りはしたものの電話は初めて。少し緊張気味に姿勢よくソファに腰かけ、一度咳払いをしてからスマホを耳に当てた。

「はい、芦ヶ谷です」
《こんばんは、香瑚ちゃん。今いいかな?》

 電話越しでも低く色気のある声に、イケメンはどこを取ってもイケメンなんだなと思いつつ「大丈夫です」と答えた。

 彼がなぜ電話してきたのかをなんとなく想像しながら、しばしたわいない話をする。

 慶吾さんは今週末にかけて出張で九州に行くのだそうで、美味しいご当地名物の話をしてほっこりし始めた時……。

《そうそう。あの後、青羽と会ったんだってね》
「っ、あ、ええ」

 急にさらりとその話題を出され、一瞬喉が詰まってしまった。言い方からして、もう青羽から聞いたようだけれど。

《最近やっと調子が出てきたみたいだから、香瑚ちゃんのおかげなんだろうなと思ってた》
「慶吾さんのおかげでもあるじゃないですか。あの提案があったからこそですよ」