脇役だって、恋すれば

 月明かりに照らされる夜道を、だらだら話してゆっくり歩く。

 いつまでもこの緩い心地よさに酔っていたいが、そろそろ例の話を切り出す頃だろう。誤解させるようなことを言った謝罪と、キスの意味を。

 高校の時にしそびれた話をぽつぽつとしながら決心した時、香瑚は柔らかに微笑んでこう言った。

「青羽が私の代わりに怒ってくれて、いつも気にかけてくれてたの、すごく嬉しかった。カッコよかったのは青羽だよ。ありがとう」

 そんなふうに感じてくれていたのかと、心がふわっと軽くなる。

 俺が心底嫌いだったとしたら、こんなことは言わないだろう。やはり俺たちはすれ違っていただけなんじゃないだろうか。

 視線を絡ませ、指先が少しだけ触れた瞬間、驚くほど胸が高鳴った。二十代後半の男にあるまじき反応だろうが、ほんのり赤く染まる彼女の頬を見ただけで鼓動が乱れる。

 お前は今、どう思っている? もしも俺と同じ気持ちでいるなら、今度こそ恋人になってくれないか。

 手を伸ばし、今と昔の想いをすべて告げようとした瞬間──。

「あれっ、青羽くん!?」

 まさかの人物が現れた。ほんのり甘い空気を霧散する人気モデルに、急激に熱が冷めていきがっくりと肩を落とす。