脇役だって、恋すれば


 ──新涼くんと初めて会ったのは、クラス替えが行われた高校三年の春。

 彼はどこにいても目立つようなキャラではなかったので、同じクラスになるまで存在を知らなかったのだが、席替えで彼が私の後ろになって顔をしっかり見た時に驚いた。

 この人、こんなに綺麗な顔立ちだったんだ。少し長めの無造作な髪がかかる瞳はくっきりとした二重で、めちゃくちゃイケメンじゃないか、と。振り返るたびにこっそり観察してしまうほどだった。

 友達は男女どちらからもよく話しかけられていたけれど、喜怒哀楽をはっきり表すのではなく落ち着いたリアクションをする人で、他のクラスメイトよりも大人びて見えた。

 ……話しかけられるといえば、私もかなりの頻度でいろんな人が接触してきた。それは決してモテていたからではない。私ではなく、姉が人気者だったから。

 四歳年上の姉は、本名の亜瑚(あこ)のまま芸能事務所に入って活動しているモデルである。

 私と似た顔立ちなのに、彼女はメイク映えして華があり、スタイルもいい。自慢の姉だし、優しくて妹思いで大好きだけれど、どこか遠く感じる存在でもある。

 当時はバラエティー番組にも出始めた頃で、天然でマイペースな性格も好感を持たれ、彼女の人気は急上昇していた。