脇役だって、恋すれば

 内心ため息をつきたくなる俺に、彼はもう一度ぽんと肩を叩いて言う。

「青羽も遠慮する必要はない。今みたいに、必死に止めに来ればいいよ」

 余裕そうな笑みを浮かべる彼を、対抗心たっぷりの目で見つめ返した。

 社長をライバルにしたくはなかったが仕方ない。そう言うなら、全力で香瑚を手に入れてやる。


 その後の食事会で、社長は香瑚を誘った理由について〝誰かに頼まれて俺を引き抜こうとしている可能性もあると考えてのことだった〟というような話をしていた。

 俺をヘッドハンティングしようとしている人間がいるというのは事実で、同業者に声をかけられることはある。だが、香瑚にその疑いを持っていたなんてことはないはず。この奇妙な食事会に理由をつけ、彼女を納得させるための嘘だろう。

 同時に下心もないと警戒心を解いてから、疑似デートというふざけた提案をしてくるものだから、さすがに黙っていられなかった。

 社長が香瑚を落とそうとしていると俺はすぐに察したが、彼女のほうはそうもいかない。純粋に仕事のためだと思っているようだったので、やめさせたくて少々きつい言葉を投げたのが逆効果となってしまった。