脇役だって、恋すれば

 社長と一緒にいると、俺はツッコみ担当になる。この人は飄々としながら時々突拍子もないことを言うから。女性との浮いた話がないだけで、男に興味があると思っているなんて冗談だろうが。

 そんな彼に対して、一抹の不安がよぎる。香瑚にかなり興味を持っているように感じたから。

「本当に一緒に仕事するつもりですか? 一切の下心なく」

 香瑚のマンションが見えなくなったリアウィンドウを一瞥し、最後のひと言を強調して問いかけると、社長は口角を上げたまま答える。

「もちろんだよ。まあ、この先僕の気持ちがどう転ぶかはわからないけどね」

 当たり障りのない答え。だが俺は、彼はきっと香瑚を特別視するだろうという予感を、この時から漠然と抱いていた。

 社長と俺は性格はまったく違うが、根本の考え方や好みが似ている。それはおそらく恋愛面でも同じ。仕事ではうまく作用しても、恋愛においては厄介なものになるだろう。


 そしてグランウィッシュと初めての打ち合わせの日、香瑚と社長が接触しないか内心かなり気にしながら仕事をしていると、ミーティングルームに入ろうとしたところで俺を呼ぶ声が聞こえた。

 気のせいかとも思いつつ振り返ると、社長に声をかけられる香瑚の姿があった。