* * *
『他の誰かじゃなくて、芦ヶ谷がいい』
誰かに陰口を叩かれたのか、自分を卑下するようなことを言う彼女に、俺は思わず正直な想いを伝えていた。最初は姉のことであれこれ言われている彼女を気にかけていただけだったのに、いつしか強く惹かれていたから。
香瑚は真面目で妙に達観したところがあり、俺にはそれがとても凛々しく見えた。話してみるとノリがよくて楽しく、所作や笑顔が誰よりも美しい。
そして、お互いの悩みには少し似通った部分があった。
俺は一般家庭よりかは裕福な家で育ち、父も兄もいい大学を出て一流企業に就職したせいもあり、自然に俺もその道を歩むことが暗黙の了解になっていた。
幼い頃はゲームも禁止されていたため、友達の家でこっそりやらせてもらうのが楽しみで。ゲームを作る仕事に携わりたいと思うようになったのは、自由にできない反動だったのかもしれない。
香瑚のように兄弟で比べられる苦しみはそこまでなかったが、親からの圧力を感じていたのは同じだ。一緒に海を見た時に、その悩みを語り合った。
『時々、誰のために生きてるんだろうって思う。自分の人生なのに』
なにげなく発した彼女の言葉は、その後もずっと俺の中に残り続けている。
『他の誰かじゃなくて、芦ヶ谷がいい』
誰かに陰口を叩かれたのか、自分を卑下するようなことを言う彼女に、俺は思わず正直な想いを伝えていた。最初は姉のことであれこれ言われている彼女を気にかけていただけだったのに、いつしか強く惹かれていたから。
香瑚は真面目で妙に達観したところがあり、俺にはそれがとても凛々しく見えた。話してみるとノリがよくて楽しく、所作や笑顔が誰よりも美しい。
そして、お互いの悩みには少し似通った部分があった。
俺は一般家庭よりかは裕福な家で育ち、父も兄もいい大学を出て一流企業に就職したせいもあり、自然に俺もその道を歩むことが暗黙の了解になっていた。
幼い頃はゲームも禁止されていたため、友達の家でこっそりやらせてもらうのが楽しみで。ゲームを作る仕事に携わりたいと思うようになったのは、自由にできない反動だったのかもしれない。
香瑚のように兄弟で比べられる苦しみはそこまでなかったが、親からの圧力を感じていたのは同じだ。一緒に海を見た時に、その悩みを語り合った。
『時々、誰のために生きてるんだろうって思う。自分の人生なのに』
なにげなく発した彼女の言葉は、その後もずっと俺の中に残り続けている。



