脇役だって、恋すれば

 沈黙が訪れる中、姉ものっそりと腰を上げ、かける言葉が見つからない様子で玄関へ向かう。しかし、靴を履いてドアの取っ手に手をかけたところで、なにか言いたげにこちらを振り返った。

「香瑚の悩みに気づいてあげられなくて、本当に悪かったと思う。私を避ける理由もよくわかった。……でもね、それでも、私は香瑚と繋がっていたい。だって大好きな妹だもの」

 瞳を潤ませながらも優しく微笑む姉がとても綺麗で、私は目を見張った。

 なるべくいつも通りにしようとしているのだろう。彼女は「じゃあ、またね」と明るく手を振って去っていく。

 静かにドアが閉まった瞬間、涙と一緒に力ない声がこぼれる。

「そういうところなんだって……」

 心が広くてとっても素敵な姉だから、こんなふうに愚痴ってしまう自分が酷く情けなく感じるのだ。結局、一番彼女と比べているのは自分自身なのかもしれない。

 彼女はきっと今頃肩を落として帰っているだろうと思うと、罪悪感で胸が締めつけられる。どうすれば、昔みたいになにも気にしないで一緒にいられる姉妹に戻れるんだろう。

 とぼとぼと寝室に向かい、ぼすっとベッドに倒れ込む。今日はいろいろありすぎて、もう考えることを脳が拒否している。

 瞼の裏に大切な人たちの姿が浮かび、もどかしいため息がこぼれた。