「川原、お待たせ」
「あ、お久しぶりです!」
「久しぶり、じゃあ行こっか」
「はい!」
先輩から返事が来た後、会う約束を取り付けるべく、頑張ってLINEを続けて。
勇気を出して、見事、放課後デートの約束をすることに成功した。
そしてゴールデンウィーク明けの学校終わり。
私は、村井先輩の隣を歩いている。
久しぶりに会う村井先輩。
やっぱり好きだなぁ…。
光に当たると茶色く見える、ふわふわとウェーブがかかった髪。
鼻が高くて大人っぽい横顔。
背も高いし、うん、かっこいい。
なんて、こっそり見てたら目が合ってしまった。
「ん?」
「あ…、なんでもないです」
慌てて目を逸らす。
「会うのめっちゃ久しぶりだよね」
「はい、学年変わってから初めて会いましたよ」
「えっそうだっけ?」
「そうですよ!廊下とかでも全然会わないですもん」
「確かに、そっか。誘ってくれてありがとう」
村井先輩がニコッと笑った。
勇気出して誘ってよかった…!
「ね、お腹空いてる?」
「あ、…はい、ちょっと」
「じゃあここ寄ってかない?俺も何か食べたい」
「、はい!」
ほんとはそこまで空いてないけど、村井先輩と少しでも長くいられるなら嬉しい。
ファーストフード店に入って、レジに並ぶ。
お店の中には、制服姿の学生がたくさん。
友達同士っぽい人もいれば、カップルっぽい人もいる。
私たちはどんな風に見えてるのかな。
「いただきまーす」
ポテトとチキンナゲットを一つずつ買って、分け合いっこする。
なんかこういうの、デートっぽくていいよね。
「あの、村井先輩」
「ん?」
「実は渡したいものがあって」
タイミング逃さないうちに渡さなきゃ。
鞄から袋を取り出して、はいと差し出した。
「ゴールデンウィーク、江ノ島に遊びに行って、そのお土産です」
「え、いいの?ありがとう!」
「ちょっとしたお菓子ですけど」
「ありがたく頂戴します」
かしこまってお礼を言った村井先輩。
渡せてホッとしてたら、そしたら俺も、という声と共に、今度は先輩の方から何かが差し出された。
「俺も渡そうと思って持ってきたんだよね、お土産」
「え、良いんですか、もらって」
「もちろん」
ちょっとしたお菓子だけど、と私の真似をして先輩が笑う。
「ありがとうございます!」
どうしよう、嬉しい。
思いがけないプレゼントに胸が高鳴る。
「どこ行ってきたんですか?」
「マザー牧場。子供の時の家族旅行ぶりに行ったよ」
「へぇ…今回は友達と?」
「うん、男3人で行ってきた」
「へぇ…」
彼女とかとそういうとこ行ったりは?
というか、彼女っているんですか?
そんな質問が喉まで出かける。
けど、結局そのまま飲み込んでしまった。
普通に聞けばいいのに、どうしてもそれができない。
意識すればするほど、言葉が自然に出なくなってしまう。
私のダメなとこ。
私は小さくため息をついた。



